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情報工学部特別講演会を開催
栗原聡人工知能学会会長
AIと人間がともに歩む未来を語る
金沢学院大学創立80周年プレ企画である「情報工学部特別講演会」は12月4日、金沢市の本多の森北電ホールで開催され、人工知能学会の栗原聡会長が今後ますます進歩していく生成AIと人間が共生し、築いていく未来について展望を述べました。栗原氏は「AIは現在の道具型から自律性のある次世代型にシフトし、製品、プロセス、ビジネスなど幅広い分野でイノベーションを起こし、新たな価値を生み出すだろう」と予想し、「それをコントロールするのが人間であり、日本は失敗を恐れず、最初の一歩を踏み出して世界をリードしていくことが大事だ」と提言しました。本学園の中高大学生や一般聴講客ら約1700人は真剣な表情で聞き入り、AIと人間がともに歩む未来について考えを深めました。
写真=講演する栗原聡氏

=12月4日、金沢市の本多の森北電ホール
「AIは中身のない薄皮まんじゅう」
自我や感情など〝あんこ〟を持つ人間が発想力、創造力を発揮
栗原氏は慶應義塾大学理工学部教授で、同大学共生知能創発社会研究センター長を務める、日本の人工知能研究の第一人者です。この日は「AI活用の深化と未来シナリオ~イノベーション多産な日本とするためには~」をテーマに講演しました。この中で同氏は、新しいことを始めるときに生成AIがイメージを具現化したり、圧倒的なデータ量のものを多言語で速く処理できたり、がんの画像を学習させて高確率でがんを発見したりする優れた事例を紹介するとともに、フェイク画像で世間を混乱させたり、依存性が高く人間の批判的思考を低下させるなど懸念事項についても言及しました。栗原氏はAIをあんこが入っていない薄皮まんじゅうに例え、「圧倒的な情報量を備えているが、実は中身は何もない。人間の〝あんこ〟は自我や意識、感情であり、何かしたいという動機があるからこそ、発想したり、創造したりすることができる。テクノロジーを理解し、どう使って、どんな価値を目指すか、みんなで考え、明確にしていく必要がある」と指摘しました。
日本人の倫理観や感性はAIとの共生に適している
失敗データやログデータがイノベーションの鍵
栗原氏はさらに、人工知能を使わない生活を送ることが厳しい状況になっている現代社会において、小中高校生が人工知能を使い過ぎると、思考力が落ちるというデータがあることを示し、「考えるという脳の機能が落ちると人工知能を使いこなすことすらできなくなる。AIに宿題をさせるのではなく、まずは自分で考えて答えを出し、その答えについてAIに意見を求め、AIとやり取りしながら思考能力を伸ばしていく方に使ってほしい」と会場の学生や生徒たちにアドバイスしました。
また、世界で人気を集める漫画「ドラえもん」について、日本人が未来のネコ型ロボットのドラえもんがぐうたらなのび太に力を貸し、しっかりさせてくれる友人として見ているのに対し、諸外国はぐうたらも個性としてとらえることを紹介し、「日本人のこうした倫理観や感性がAIと共生する社会に一番必要なもので、苦言も呈し、拒否もできる力があってこそ、AIと人間の共生は成立するのではないか」と力を込めました。さらに「失敗のデータやログデータにイノベーションの鍵がある」と述べました。
講演後の質疑応答では、本学情報工学部1年の長竹隼人さん、金沢学院大学附属高校総合進学コース2年の大森悠人さん、同附属中学校特進コース2年の相内凱登さんらがAIを使った教育現場のメリット、デメリットなどについて質問しました。