金沢学院大学

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矢野財務次官が講演
本学で日本の財政状況を解説

 5月22日(水)4時間目の時間帯に、講堂にて、経済学部の授業の一環として、前財務事務次官 矢野康治氏による講演会が開催されました。タイトルは「わが国の財政について-不都合な真実を正視する」です。
 講演会には、経済学部の学生をはじめ、経済学部や他学部の教員、高校の先生も参加しました。また、オンラインでのリアルタイム配信も行い、250名を超える参加がありました。
 講義では、1970年代から歳出が歳入を上回る傾向が続いており、年々、少子高齢化などを背景にして、その差額が「ワニの口」のように大きく開き、財政赤字が膨らんでいること、そして、国債残高のGDP比は世界ワーストの水準にあるとの事実を指摘されました。
 また、日本は、社会保障費以外の支出は、各国に比べて相対的にウェイトが低く、「小さい政府」であるので歳出カットには限界があること、これまでの景気回復の過程でも財政は目立って改善しなかったこと、財政出動による経済効果も乗数効果が小さいため、かえって財政を悪化させてしまうことが多いことなどを挙げられ、対策の難しさを強調されました。
 エコノミスト、経済学者で、財政に関して楽観論を唱える者も少なくないが、財政を担ってきた責任者としては、現実を踏まえた議論になっていないと感じる、皆さんには厳しい現実を正視してほしい、と訴えられました。 少子高齢化の波を止めたり、大幅な歳出カット、大幅な負担増を求めることも短期的に難しいとすれば、長寿化が進む中で、幸い日本の高齢者は働き続けたいという意欲を持っている。就労年齢の延伸が現実的で有効な対策ではないか、との考えを示されました。
 さらに、日本の財政では、新たな政策に対して必ず財源を求める、というシンプルな考え方が、先進国の中で日本だけが確立していない。コロナ禍関連の支出が発生する中で財源の議論が出なかったことなども問題点として指摘されました。
 質問は、会場・オンライン双方からたくさん寄せられたのですが、矢野氏は時間の許す限り、丁寧に一つ一つにご回答してくださいました。そして最後に、次世代を担う皆さんには、厳しい現実を乗り越えて、若い力で未来を切り開いてほしいと結ばれました。
 事務次官とは官僚のトップです。そのような立場にあった方が、大学生に対しても、持論を全力で熱く語りかける姿は大変印象的でした。

講義の様子